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公益目的事業比率の未達対策

 「収支相償」や「遊休財産額」の問題と異なり、公益目的事業比率が毎年50%を達成することができない場合については、法人の行っている事業構造そのものの問題です。そのため通常は、収益事業等を廃止・事業譲渡等をして縮小するか、一部を公益目的事業に繰入する以外には効果的な対策はないと思われます。ただし、単に一時的な基準未達要因として、次のような事象が起こることも考えられます。

 

@一時的に公益目的事業を休止したり、規模を縮小せざるを得ないとき
 例えば、美術館を運営する法人が建物の建替えのためしばらく閉館しなければならないケースや、講座事業を運営する法人において専任講師が退職し容易には代替講師が採用できないケースが考えられます。

 

A一時的に収益事業等の規模が大きくなるとき
 例えば、収益事業等に該当する展示会を開催して、予想外に好調であったため当該年度だけ事業規模が拡大したときや、収益事業等に該当する出版業で当該年度だけ一時的に販売が増えたケースが考えられます。

 

B公益目的事業に属する特定費用準備資金の目的外取崩しを行い、一時的に計算上の公益目的事業費が縮小したとき
 通常は、公益目的事業に属する特定費用準備資金の取崩しは充当すべき費用があるのだが、目的外取崩しの際は充当すべき費用がなく、計算上の公益目的事業比率は一時的に低下することになります。

 

C公益目的事業に対する共通費用の配賦割合が、実際の従事割合や使用割合と比較して少なすぎるとき
 例えば、移行認定・公益認定申請書に記載した公益目的事業に対する共通費用の配賦比率が20%しかなく、これを移行後も見直すことなく継続的に使っているようなケースで、現実と比較しても不当に配賦比率が低すぎるような場合が考えられます。

 

 公益目的事業比率の未達対策に関しては、本来は事業構造を見直すべきであり、会計上の調整や制度面の調整だけでは対応はできません。
 ただし、@特定費用準備資金を新規積立する方法、A特定費用準備資金の取崩し時期を調整する方法により、調整できる場合があります。
 これらのほか、土地の使用に係る費用額、融資に係る費用額、無償の役務の提供等に係る費用額の各制度を利用する方法もありますが、要件が厳しく、実際に活用するために検討対象とするには困難なものがあります。