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[2]I 特定資産の計上

 前記Hまでの決算整理により、正味財産増減計算書及びその内訳表の内容が確定したこととなります。しかしこのままでは、貸借対照表内訳表にマイナスの預金残高があるなど、不適正な決算書となっていることもあります、I及びJにおいては、貸借対照表内訳表の整理が必要な項目を検討します。

 

 とくに収支相償を満たさない場合や遊休財産額の保有制限を超過する場合などにおいては、生じた剰余金を特定費用準備資金や資産取得資金を積み立てしたり、金融資産として公益目的保有財産を取得することなどが考えられます。急遽、これらの特定資産を積み立てなければならない場合、規程類を整備するため理事会決議をして、次のとおり特定資産の計上を行います。

特定費用準備資金

 特定費用準備資金は、原則として将来の特定の活動のために特別に支出する費用に充てる場合のほか使用できない特定資産です。当該財産は、遊休財産額の計算上は控除対象財産になり、また公益目的事業である活動を行うための特定費用準備資金の積立額は、収支相償の第1段階及び第2段階の計算上公益目的事業の費用に算入されます。

 

【仕訳例:公益目的事業である20周年事業のための積立預金を計上します。】

 

 (公益目的事業会計) (借)20周年積立資金×××/(貸)現金預金×××

 

 

【制定することが必要な規程の例】

 

【word】 特定費用準備資金取扱規程(公益社団)

 

【word】 特定費用準備資金取扱規程(公益財団)

資産取得資金

 資産取得資金は、原則として固定資産(公益目的保有財産又は収益事業等供用資産に限る。)の取得や改良に充てる場合のほか使用できない特定資産です。当該財産は、遊休財産額の計算上は控除対象財産になり、また公益目的保有財産を取得するための資産取得資金の積立額は、収益事業の利益の50%超を公益目的事業会計に組み入れる場合の収支相償の第2段階の計算上、公益目的事業の費用に算入されます。

 

 

【仕訳例:公益目的事業で使用する建物取得のための積立預金を計上します。】

 

 (公益目的事業会計) (借)建物取得資金×××/(貸)現金預金×××

 

 

【制定することが必要な規程の例】

 

【word】 資産取得資金取扱規程(公益社団)

 

【word】 資産取得資金取扱規程(公益財団)

金融資産である公益目的保有財産の積立

 金融資産である公益目的保有財産は、原則として元本の取崩しができず、その運用益を当該公益目的事業のために使用することを目的に保有する基本財産又は特定資産です。当該財産は、遊休財産額の計算上は控除対象財産になり、また公益目的保有財産の取得額は、収益事業の利益の50%超を公益目的事業会計に組み入れる場合の収支相償の第2段階の計算上、公益目的事業の費用に算入されます。
 しかしながら、このような金融資産である公益目的保有財産の積立については、次の4条件を満たす必要があり、非常に困難な方法といえます。

 

(1)事業拡大に関して、実物資産ではなくて金融資産を取得して業務を拡大する必要性が明確なこと
 (2)事業拡大の内容が具体的になっており、それが事業計画等として法人において機関決定等(理事会等の承認、決定)を受けていること
 (3)運用する金融資産について、その内容及びこれから生じる運用益の見込額が妥当であること及び運用益が事業拡大の財源として合理的に説明できるものであること(事業拡大に伴う費用と運用益のバランスが適当であること)
 (4)その他、事業の財源として、剰余金を用いることについて望ましい理由があること

 

 具体的な仕訳例と規程例は、次の通りです。

 

【仕訳例:運用益を公益目的事業で使用するための基本財産を計上します。】

 

 (公益目的事業会計) (借)基本財産×××/(貸)現金預金×××

 

 

【制定することが望ましい規程の例】

 

【word】 公益目的保有財産取扱規程(公益社団)

 

【word】 公益目的保有財産取扱規程(公益財団)